土地評価のブログ

不動産鑑定士の日々

匙(さじ)

小谷村栂池高原(2010.8)より。

私が中学生の頃、レストランへ行くときは緊張しました。ナイフ、フォークの使い方が心配で。また、音をたててはいけないように言われました。


東京で修行時代(35年前)、師匠に西洋料理の草分けである上野精養軒(明治5年創業)へ連れて行ってもらえてうれしかったことを思い出しました。


文献に江戸末期、日本人に西洋料理が出された時の記録があります。
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万延元年(一八六〇)、遣米使節一行が「成臨丸」でサンフランシスコに上陸、初めて夕食を出された時の記録がある。
「午後五時、サンフランシスコの料亭で晩飯を食べる。味はよくないが、空腹はいやされる。いずれも大きな皿に盛られ、フォーク(匙に似た形をして四本の足がある)、ナイフ(小さな庖丁)、スプーン(食用匙)を人数に応じてテーブルに並べ、食事をする時には箸を使わず、この三品を使う」
さらにワシントンに行って食事をしたが、
「いずれも塩味が薄く、食べることができない。食卓の上に塩、辛子、胡椒等五六種の調味料が出ているものの、わが国の味ではなく、皆困惑した」
これらの料理は大御馳走なのだろうが、塩気もなく油の臭いがして食べることができない、とすこぶる不評であったと記されている。
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フォークのことを「匙(さじ)に似た形をして四本の足がある」と表現したのは面白いですね。
そういえば小さい頃、スプーンを”さじ”と言ってました。


”さじ”という言葉に哀愁を感じます。
<引用・参考文献>
吉村昭「事物はじまりの物語」pp.44,46,,ちくまプリマー新書

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