土地評価のブログ

不動産鑑定士の日々

洪水地の地名(昔の時刻)

木島平村から。

小布施町を流れる千曲川の河川敷には「〇〇ノ起」の地名がみられます。
たとえば、「午(うま)ノ起」「戌(いぬ)ノ起」「巳(み)ノ起」などなど。


文献(信濃の巨流千曲川)に下記記述がありました。
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小布施橋を西へ渡りきった左岸の地籍を「寅之起(とらのおき)」という。洪水で荒れた畑地を寅の年に再開発したところから付いた地名で、他にも「酉(とり)ノ起」「亥(い)ノ起」「新午(しんうし)ノ起」「子(ね)ノ起」などがある。
千曲川周辺は肥料もいらないといわれるほど肥沃の地である代わりに、ひとたび洪水となれば、畑地を押し流し、大きな被害を与えた。(略)村人は、そのたびに徒労とも思えるような災害にもめげず耕作を繰り返してきた。「○○ノ起」はその歴史の一部であるが、
(略)起返地(おきかえりち・開墾地)には、その干支年を付けるのが通例(例、辰(たつ)起返」)である。
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地域によっては洪水にあった土地を開墾した場合、地名に干支(えと)年を付ける慣習がありました。


百科事典ウィキペディアによると”干支(かんし、えと)は、十干と十二支を組み合わせた60を周期とする数詞”をいうとのこと。
十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類
十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12種類


たとえば「午(うま)年」は十二支の中間(7番目)にあたり、午は真ん中の意味がありそうです。


また、江戸時代、庶民は時刻を数でいいました。午前0時を九つとして2時間毎に八つ、七つ、明六つ(午前5時~7時)、五つ、四つ、午前11時から再び九つ、八つ、七つ、暮六つ(午後5時~7時)、五つ、四つというように。


たとえば「午(うま)の刻」は九つ、午前11時~午後1時にあたります。


下記サイト(歌舞伎用語案内)には時刻の説明(括弧は追記)があり、何気なく使っていた言葉(おやつ)の意味が理解できました。
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昼の12時が午の刻で「正午」、その前が「午前」その後が「午後」となります。「おやつ」は「八つ」(午後1時~午後3時)が語源です。
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昔は時間の流れが2時間単位だったようです。


小説家の吉村昭氏が時刻を上記の数で言ってしまう癖をエッセイで書いていたことをふと思い出しました。歴史小説家らしいですね。
<引用・参考文献>
「信濃の巨流 千曲川」pp.252,261,企画/発行:建設省北陸地方建設局千曲川工事事務所,平成5年2月24日
<参考サイト>
歌舞伎用語案内(時刻)
https://enmokudb.kabuki.ne.jp/phraseology/3514/ 

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