土地評価のブログ

不動産鑑定士の日々

馬沓(うまぐつ)

小谷村千国の庄史料館(2010年)から。
通常の馬のクツ、牛にはかせたクツが写っています。

冬用の馬の沓

歴史ドラマに登場する馬は靴(馬沓)をはいていませんが、蹄鉄を打たない時代は写真のようなわらじで作った靴をはくのが普通だったようです。


文献によると
「近代以前の日本の馬は鉄蹄を打たないので、馬蹄は丈夫であったが、それでも砂利道、岩だらけの道では馬蹄が傷むし、長距離行軍では擦り減る。そのために考えられたのが馬沓でこれは人の履く草鮭と同じように藁で作ったが、これの損耗ははなはだしかった。故に戦場などではたくさん用意したらしいが、絵巻物や古画では馬沓を履いている図は見られない。これは省略されたか、古い馬ほど蹄が丈夫であったか、ごの点は未だ不明である。江戸時代の浮世絵版画あたりであると荷馬等は馬沓を履いているが、武家の馬には描かれていない。しかし馬沓を用いていた事は事実らしく.室町時代頃から記録が見られる。(略)
故に室町時代頃は馬沓を履かせるのは當識であり、戦場に行くときは後輪の四緒手や武者自身の腰に自分の履く予備の革鮭と共に用意したり、武家奉公人の供に沓箱持を迎れたりした。
「増補家忠日記』にも天正十八年(一五九〇)三月秀吉の小田原陣に、秀吉が宇津山に到着したところ、郷民が勝栗と馬の沓をたくさん持って戦勝の祝いにやって来たという記録がある。馬沓を失うと、馬の行動に影響するので当時は軍事の備品でもあった。藁で編むから.重量のためにすぐに傷んでつけ替えなければならぬので、武者草軽が長持ちするように苦心したのと同じく、馬沓も丈夫なものを作るために様々に考案された。(略)
軍記物にはそうした現実的の記述はなく、小説・映画・テレビの時代物では一頭の馬に乗り詰めで数日間戦ったり行進したように表現されているが、馬は時々予備の馬に乗替えたり、休憩させたり、常に馬沓を履き替えさせたり、馬の脚を冷やしたりする事が必要であった。戦場に行く時は必ず乗替馬が必要であった。」


歴史物が好きで大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を毎週、見ています。
今までドラマや映画で長距離の移動に乗替馬を用意しているシーンは、あまり見たことのない気がします。
昔、この文献を読んでから馬の足元を少し気にするようになりました。


コトバンク:https://kotobank.jp/
馬沓(うまぐつ)
① 馬のひづめが割れたり、すりへったりして傷つくのを防ぐために、ひづめの裏につけるわら製の履き物。馬の草鞋(わらじ)。


<引用文献>
笹間良彦「図説日本合戦武具事典」p.352,柏書房,2004

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