土地評価のブログ

不動産鑑定士の日々

外壁後退距離

中野市(2017.3)から

市町村によっては第1種・第2種低層住居専用地域に建物の外壁後退距離(建築基準法54条)を定めていることがあります。外壁後退距離は、第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域または田園住居地域内において設定されるもので、後退距離は1mまたは1.5mのいずれかに限定されます。


たとえば1mと定められている場合、隣地と道路境界の両方から1メートル以上離す必要があります。ただし、風致地区において、別途の規定、たとえば隣地境界から1メートル、道路境界から2メートル以上離さなければならないと定められている場合、より厳しい風致地区の規定(道路境界から2m以上)が優先されます。


バルコニー・階段・出窓等は外壁後退対象になったり、附属建築物である物置及び自動車車庫の緩和規定の取扱いがあったりするなど実務上の運用は複雑です。


特に外壁後退距離が問題となるケースとして土地面積が小さく奥行長大な土地があげられます。
たとえば土地面積が80㎡程度、かつ、間口(例:5m)と狭く奥行(16m)が長い=奥行長大の土地は、建物の幅が狭い建物(例:物置)しか建てられなかったり、建築が実質的に困難になったりすることがあります。


過去の判決(注)では競売評価書に外壁後退距離が記載なく、実質的に建物が建築できない土地(現況資材置場)の最有効使用を戸建住宅地と記載している点が争点のひとつとなりました。
<土地の概要>
・第1種低層住居専用地域(建蔽率50%・容積率80%)、外壁後退距離1.5m
・間口5.37m、奥行17m、地積93㎡の長方形地には、外壁後退距離を考慮すると幅2.37m程度の建物しか建てることができない
(注)奈良地裁H13年10月31日判決(平成11年(ワ)第524号,損害賠償請求事件)


上記判決を踏まえると外壁後退距離の定めがある場合、鑑定評価書や調査報告書に記載したほうがよさそうです。
<追記>
一部修正しました。

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