土地評価のブログ

不動産鑑定士の日々

杞柳(きりゅう)

長野市大岡(2013.5)から

樹木図鑑をみていたら「イヌコリヤナギ」に下記記述があり、面白い名前の付け方だなと感じました。
「近縁のコリヤナギは枝の皮をむいて柳行李(やなぎごうり)」をつくるが、本種は行李づくりには使われず役に立たないために「イヌ」を冠して名づけられた。」


イヌが付く樹木は多くあります。たとえばイヌガヤ、イヌザクラ、イヌマキ、イヌツゲ、イヌブナなど。そういえば私が昨年買ったエンジュはイヌエンジュでした。


ふと中野市は昔、杞柳細工が盛んだった市誌の記述を思い出しました。
文献(中野市誌)によると
「中野市に杞柳細工が卓越したのは、杞柳栽培の導入にあずかっている。明治三十九年、洪水に強いとされるコウリヤナギを常習水害地の延徳沖の水田地帯で試作したことが契機で、兵庫県豊岡市から行李などのかご類を編む技術を導入して、集荷問屋を中心に加工が始められた。当時は、農家の副業として栽培農家で行われたが、第二次大戦中昭和十七年から信州杞柳販売統制組合によって軍事杞製造に拍車がかけられ、「長野県杞柳軍需品工業」として中野市を中心に24工場1,300人の従業員が働いた。」とあります。


昔、中野市延徳地区では篠井川の度重なる氾濫に悩まされていました。明治末になって、水害に強い杞柳(きりゅう)を植えて柳行李(やなぎごうり)やカゴ類などの日用品を編んで商品化に至った経緯があります。現在、杞柳細工をしている方がいるのかどうかは知りません。


杞柳細工で有名な兵庫県豊岡市からカゴ類を編む技術を導入していたようです。
当時、車などなかったでしょうから指導者を呼び寄せるのは大変だったこととと思います。


<引用・参考文献>
濱野周泰監修「葉っぱでおぼえる樹木」p.57,柏書房
「中野市誌 歴史編下」p.804
「図説・奥信濃の歴史(下巻)」p.130,(株)郷戸出版社
<参考サイト>
玄武洞ミュージアム(豊岡杞柳細工)
https://genbudo-museum.jp/kiryu/

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