土地評価のブログ

不動産鑑定士の日々

地すべりの地割慣行

山ノ内町(2021.4)より

長野市七二会(なにあい)谷原には”割り上げ岩”と呼ばれる大きな岩があります。長野市誌に掲載されている写真から推定すると高さは2.5mくらいありそうです。昔、現地へ行ってみましたが場所はわかりませんでした。


同市誌に”割り上げ岩”の下記説明があります。地すべり地帯にも地割慣行※があったようです。


「西河原の地すべりと地割慣行
 谷原(やはら)の西側を西河原という。地すべりの常習地で、流れている沢を泥沢といって犀川に流れこんでいる。水田は俗に千枚田といって棚田になっている。昭和20年(1945)10月豪雨のため地すべりを起こした。定谷の西斜面に林をなしたけやきも根こそぎすべりだし、なかには周囲1.5mの大木が引き裂かれたものもあったという。谷原では17ha、定谷は数haの荒廃地となった。
 地すべりが起きると耕地の所有位置によって面積に不公平ができてくる。ここでは昔から谷原に、「割り上げ岩」(大岩)という不動の岩がある。この岩を基準に測量し、耕地の再分割をしている。土尻川沿いには地すべり地が多いが、このような地割慣行のあるところはほかにはないという。
 七二会地区の「地すべり等防止法」による地すべり指定地域は13カ所、563.4ha(平成元年・1989)。その主な地域は古間・倉並・遠見・西河原などで全体の52.8%を占めている。」


谷原地区の東方面には「論地」の地名があります。「論所」同様、論じて争う意味で使われる地名なので地すべりがかかわってそうです。


なお、今回のテーマは昔、ホームページのブログで使っていたものを焼き直しました。


※地割(割替・割地)慣行-河川敷や自然堤防上の農地は、個人所有にしていると洪水時に全て失われてしまいます。そのため村落の共有地にしておき災害時には残った農地を分割して利用する慣行が江戸時代に千曲川沿岸などでありました。
土地評価のブログ参照
「論所という地名」
https://muragon.com/dashboard/confirmEntryUpdate
<引用・参考文献>
「長野市誌第八巻」pp.825-826

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