土地評価のブログ

不動産鑑定士の日々

家賃と間口

飯山市一山温井(いちやまぬくい)から。

地下街やショッピングセンター内の店舗家賃は、売上高を基に割合を乗じて決まる場合があります。
たとえば家賃は売上高の8%と当事者間で決めていた場合、売上高が年1200万円とすると家賃は年96万円(月8万円)となります。


前に長野市の「権堂(ごんどう)町史」を読んでいたら、次の記述が目に止まりました。
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さて、中央通りの改修工事が本格化するなかで、市内の土地および建物の価格は、うなぎのぼりに上昇し、それにともない家賃や地代も吊り上げられていった。とくに、改修中の中央通りの商店の家賃は、最低で間口1間につき10円となり、3間口のものは30円以上、5間間口のものは7,80円まで借家希望者があった。
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善光寺正面へ通じる中央通りの拡幅工事(幅10間)が大正時代(T12.5起工)に進められ、それに伴って地価が高騰した社会的背景があります。


大正時代、繁華街にある店舗(近隣商業地域)の家賃は、間口の長さが家賃の基準になっていたようです。確かに間口は広いほど顧客の入りやすい利点があります。


昔、郊外に大型店舗が建ち並ぶ路線商業地域にある土地を調査したとき、間口が広いと看板や案内板が目に入りやすく車の入りやすさを実感したことがあります。近隣商業地域のみならず路線商業地域も間口の長さが価格形成要因に大きな影響を及ぼしていました。


専門的ですが、土地価格比準表(七次改訂)では「郊外路線商業地域」と「近隣商業地域」の画地条件(個別的要因)を比べた場合、間口狭小の率が異なっています。
<間口狭小の率>括弧は極端に劣る率
郊外路線商業地域(0.80)<近隣商業地域(0.87)


当時、路線商業地域の方が減価率の大きい理由に納得しました。
<引用・参考文献>
権堂町史編集委員会「長野市 権堂町史」p.144,平成5年
地価調査研究会編著「土地価格比準表(七次改訂)」平成28年

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