土地評価のブログ

不動産鑑定士の日々

哀愁の詩人

小谷村(2010.10)から。

市誌や歴史関係の書物を整理していたら田中冬二(ふゆじ)の詩集が出てきました。田中冬二(1894年-1980年)は銀行員として働きながら哀愁の詩を数多く作った詩人です。


旅のおり長野県へたびたび立ち寄り詩作しています。小谷(おたり)村山田温泉に宿泊した際、下記詩を残していて旅館の前には詩碑(下記写真2010.11)が建立されています。
---------
<小谷温泉>
ごろりごろりごろり
石臼に夜があける
豆腐が山のつめたい水に
ざぶんざぶんととびこむ
---------


私は下記作品が気に入っています。
---------
<小谷温泉まで>
北には青い海がある
姫川には山の憂鬱を日本海へはき出している
---------
また、法師温泉(群馬県みなかみ町)に宿泊した時の作品(法師温泉)は、池波正太郎が絶賛しています。田中冬二の世界に浸りたくて暇ができると何回も泊まりに行ったそうです。


文献(夜明けのブランデー)によると
---------
田中氏は銀行員として、つつましく、しかも誠実に仕事をしつつ、詩を発表しつづけ、しずかに世を去った。
ところが、このたび筑摩書房から〔田中冬二全集〕三巻が刊行されることになり、その一巻が出たので手に入れ、おもうさまにたのしんだ。
田中氏が生きておられたら、この全集を、どんなによろこばれたろう。
また、故三島由紀夫氏が存命ならば、さぞ満足のおもいをしたにちがいない。三島氏も田中冬二の詩を愛してやまぬ人だった。
---------
田中冬二ファンの世界がありました。


<引用・参考文献>
「田中冬二全集第一巻」pp.48,昭和52年
「田中冬二全集第三巻」pp.182,昭和60年
「青い夜道」詩集,第一書房,1929
「海の見える石段」,今日の詩人叢書第5,詩集,第一書房,1930
池波正太郎「夜明けのブランデー」p.80,文春文庫

×

非ログインユーザーとして返信する